広告における商標利用|商標侵害をしない・させないために

インターネット広告、とくにリスティング広告では
・自社サービス名で検索すると競合の広告が出る
・類似名称のサービスが広告上で並ぶ
・知らない会社が自社名を使って比較広告を出している
といったことが珍しくありません。
すべてのケースが「商標侵害」になるわけではない一方、正しく対処すれば自社ブランドを守ることも可能です。
本記事では、広告における商標利用について、実務視点で解説します。
目次
商標とは
商標とは商品・サービスの出所を示す識別標識で、自社の商品やサービスを他社と区別するための目印といえます。
具体的には、次のようなものが該当します。
- 会社名、屋号
- 商品名、サービス名
- ロゴ、シンボルマーク
- キャッチフレーズ
これらを「商標」として特許庁に出願し登録されることで、法的に独占的な使用権が認められます。
ちなみに有効期限は登録から10年で、何度でも更新できます。
登録商標は、特許庁が運営するWebサイトで誰でも検索できます。
『J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)』https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

商標は「標章」と「用途(区分)」で登録される
商標は下記の組み合わせで登録されます。
■どの名称・シンボル(標章)か
■どの商品・サービス分野(用途)か
そのため、用途が異なれば、同じ名称でも合法的に利用できるケースがあります。
たとえば、飲食店名として登録された商標と、ITサービス名としての利用が併存する場合などです。
新しい事業名やサービス名を検討する際、すでに登録されている商標がないかを確認することが重要です。
やっとの思いでサービス名を決定しても、先行して同じ用途で商標登録されていれば、その名称を対外的に利用することはできません。
重要なのは、登録されていない名称は、原則として商標として保護されないという点です。
「先に使っていた」「有名だから」といった理由だけでは、商標侵害を主張できず、広告での使用を止めさせることはできないケースもあります。
広告で他社の商標侵害を指摘できるケース
広告において商標侵害を主張できるのは、商標が広告表現として明示的に使用されている場合です。
- 広告テキストに自社の商標名が記載されている
- バナー画像に自社のロゴやサービス名が含まれている
- 「〇〇(商標名)より安い」「〇〇と比較」などと表示している
このような場合、商標を無断で広告に使用していると判断され、掲載主や広告プラットフォームに対して削除や修正を求めることが可能です。
広告で商標侵害を指摘できないケース
一方、誤解されやすいのが以下のケースです。
「自社商標で検索すると、他社のリスティング広告が表示される」
これは多くの場合、広告主が自社商標を直接指定(購入)しているのではなく、
広告のキーワードマッチタイプ(部分一致・類似拡張)によって表示されているものです。
広告主は、
「〇〇 比較」
「〇〇 代替」
といった一般的なキーワードを登録しているだけで、貴社の商標を直接指定しているわけではありません。
この場合、商標を“使用”しているとは言えず、侵害とはならないと判断されるのが一般的です。
法的拘束力はないものの、自社商標で他社広告が出ることを良しとしない場合、掲載取り下げを依頼することは問題ありません。
キーワード除外方法と共に、掲載先企業へ依頼メールを送付すると良いでしょう。
商標侵害の申請方法と、その他の対応手段
広告において商標侵害が疑われる場合、対処方法は広告媒体への申請だけではありません。
侵害の程度や事業への影響に応じて、複数の選択肢を検討することが重要です。
①侵害している事業者への直接連絡
侵害が明確で、かつ事業者が特定できる場合には侵害事業者へ直接連絡する方法が最も有効です。
- 商標権を保有している事実
- 無断使用が確認された広告内容
- 使用の中止または修正を求める旨
これらをメールや書面で冷静に伝えることで、早急に解決するケースも少なくありません。
ただし、企業間の直接のやり取りとなるため、事実関係を整理したうえで慎重に行う必要があります。
一般的に企業infoやWebサイト問い合わせ窓口へ送ることになるため、事業者によっては返答が返ってこない可能性もあります。
②Google広告・Yahoo!広告への申請
Google広告、Yahoo!広告のいずれも、商標権者向けに専用の申請フォームを用意しています。
①で返答が得られない、連絡先が分からない場合などに有効です。
Google広告
Googleには「商標に関するポリシー」があり、専用フォームから申請可能です。
商標の名称、商標登録番号、権利者情報、問題の広告URLや違反広告のキャプチャを取得しておきましょう。
Report Content on Google:https://reportcontent.google.com/forms/legal_trademarks/trademark_ads
Yahoo!広告
Yahoo!広告にも同様の申請窓口があります。
両者とも、広告文や表示内容に商標が含まれているケースに限り申請の対象となります。
商標登録原簿はJ-PlatPatのキャプチャで代用可能です。
商標権者による商標の使用制限の申請:https://ads-form-business.yahoo.co.jp/enqueteForm/brand_term_limit
媒体側で商標侵害が認められれば該当事業者の広告は審査否認となり掲載停止、また申請された商標を含む広告は新規作成できなくなります。
しかし媒体社から措置の返答が得られないことが一般的で、商標侵害の改善が保障されるものではありません。
また、申請の際には広告を委託中の代理店へ利用権限を付与することを忘れないようにしてください。
関連記事>> リスティング広告における商標使用制限の申請方法
③弁護士・弁理士への依頼
①②で状況が改善しない場合、法的な手段に取らざるを得ません。
状況の改善が見られない場合には、弁護士や弁理士など専門家への依頼を検討します。
専門家に依頼することで「内容証明郵便による警告書の送付」「訴訟含めた対抗要件の検討」など、よりより正式かつ強力な対応が可能になります。
リスティング広告で自社商標を利用できない場合
意外と多いご相談が「自社の商標を使って広告が出せない」というケースです。
これは、下記のような理由が考えられます。
- 広告運用を委託している代理店が商標制限を受けている
- 過去の商標申請により代理店に利用制限が設定されている
Google広告・Yahoo!広告への侵害申請で該当の代理店が許可されていないケースがほとんどです。
代理店がクライアントの許可のもとに商標利用申請を行い、プラットフォーム社に認証されることで、申請した商標キーワードを利用することができるようになります。
自社名・サービス名が他社商標に抵触した場合
新しく作った商品やサービス名が既に他社に同じ用途で商標登録されていた場合、直ちに使用を停止する必要があります。
自社の確認不足により他社の商標を侵害した場合、損害賠償請求を受けても仕方ありません。
一方で、自社で長く使用してきた名称が、後発の企業に商標を取得されてしまった場合はどうでしょうか。
もし、自社の名称がすでに他社の登録商標だった場合でも「先使用権」が認められる可能性があります。
先使用権とは、自社名称が他社の商標登録よりも以前から使用していたことが公然と認められること、地域や業界で一定の認知があることを条件に、例外的に自社名称の継続利用を認められる権利のことです。
特許庁『先使用権制度について』https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/senshiyo/
先使用権が認められれば、競合企業による敵対的な商標登録にも対抗することができます。
しかし立証は容易でなく、弁理士など専門家への相談が求められます。
まとめ
広告と商標の関係は、感覚的な判断ではなく、登録状況と使用態様によって決まります。
「侵害しているつもりはない」
「侵害されているとは思っていなかった」
というすれ違いが起きやすい分野でもあり、組織的な運用と管理が必要です。
しかし、知的財産権としての商標を正しく運用することでブランド保護、ブランド育成の戦略に優位性が生まれ、競合との差別化に大きなメリットがあります。
広告を活用するすべての事業者にとって、商標はトラブル回避だけでなく、安心して事業を成長させるための重要な基盤と言えるでしょう。

- 2026.02.14
